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小学校での研修が始まって4か月が経ちました。KinderからGrade7まである大規模校の小学校ですが、毎日違うクラスに入り、クラスのサポート及び日本文化の授業をしています。今回は実際に行った授業内容を2つ紹介します。

①折り紙でサンタクロースのポップアップカードを作ろう
サンタクロースを折り紙で作りました。学年によってサンタクロースの折り方を変え、Grade7のクラスには一番難しい折り方を教えました。その後、ポップアップカードの作り方をスライドで見せながら説明し、サンタクロースが飛び出すようにしました。日本の小学校で、国語「しかけカードの作り方」という題材が小学2年生の教科書に載っていたことを思い出し、今回の実践に至りました。Kinderのクラスではサンタクロースを折り紙で作ったあと、リボンを通しクリスマスオーナメントにしました。今回の折り紙の授業は、ただ折り紙をして終わるのではなく(折った折り紙をぽいっと捨てられてしまうのが嫌だったので...)、他のものに活用できるよう工夫しました。

②カタカナで自分の名前を書こう
日本で英語教師をされた経験のある校内の先生から「カタカナを教えたら面白いかも!」とアイディアをもらい実践しました。あらかじめ担任の先生からいただいていた出席名簿をカタカナに変換し、子供たち一人一人に自分の名前を練習できるプリントを作成しました。お手本の文字やマス目、書き順も示すようにしました。
授業の最初に、スライドを使いながら日本語には3つの文字があること、カタカナが主に外来語を書くときに表す文字であることを英語と比較しながら説明しました。その後、プリントで自分の名前を練習し、古風な柄が描かれている千代紙に日本語と英語で名前を書き、ブックマークにしました。

「他の折り方も教えて」と授業後に言いに来た子や、常用漢字の数をメモしている子など、どちらの授業も子供たちは興味をもって取り組んでいました。先生方も子供たち側になって授業に参加してくれました。
12月7日に1年生から3年生まで、14日に4、5年生の生徒のウィンターコンサートがありました。保護者の方々が来校し、子どもたちはサンタの帽子をかぶったり、クリスマスカラーの服を着たりして、歌やクラブの発表をしました。私は、合唱団のピアノ伴奏をしました。校内に本格的なホールがあるので、前日のリハーサルも本番と同じように行うことができ、環境に恵まれているなと感じました。ホールは他にも、隔週くらいで行われる金曜日の集会やハロウィンなどのイベントで使われます。

集会では、クラスごとに発表する機会が回ってくるので、テーマを決めて10分くらいの劇を行います。私の所属しているクラスは年明けに発表があるそうで、みんなで話し合いながら台本を作り、セリフを読む練習をしていました。どの子も舞台の上で堂々としている印象を受けたので、ホールが身近にあり、そこで発表する機会があるということも力を伸ばす要因なのかなと感じました。

異学年交流活動も行われています。私の所属しているクラスは定期的に3歳児の1クラスに行き、その子たちと遊んだり、ハロウィンの時には3歳の子たちのパンプキンペインティングを手伝ったりしていました。また、先日は6年生が算数クイズを紹介してくれました。2~3人のグループに分かれ、6年生の生徒から出される魔法陣や計算トリックの問題などに取り組みました。UOIの時間には高校生が各クラスに2~3人来て、一緒に調べ学習に取り組んだりアドバイスをしたりしてくれることもあります。自然にお互いの学びを助け合う姿が見られ、とても参考になりました。

日本化の授業はクリスマスが近いので、クリスマスリースとサンタ、クリスマスベル、トナカイの折り紙を紹介しました。3歳児クラスでは、途中まで折った状態のものを子どもたちに渡しました。「角をそろえる」「しっかり折る」などの作業が、小さい子には難しかったです。お手本を空中で折ったら、それを真似して机を使わない子がいたので、お手本の見せ方も気をつけなければいけないと思いました。あとは、日本の観光地について、リクエストが入った1クラスに紹介しました。クイズや神社の参拝の仕方などを取り入れながら、スライドを使って説明をしました。日本に興味をもってくれたようで、こういう活動をもっとしたかったなと思いました。
<活動内容>
・6年生の選択授業の1つで、理科を担当
・放課後のサッカークラブの指導
・5、6年生の英語の授業のT2
・特別支援教室のサポート
・水泳授業の引率 

< 学校での公共施設の利用 >
学校にプールの施設がないため、体育でプールを実施する際は、市内の公共施設を利 用している。9月~12月上旬までの期間で各クラス4回、施設利用の時間割が割り当てられている。水泳の授業はその施設のトレーナーが行っている。
泳の授業は4年生で100m泳げるかのテストがあり、テストに合格出来なかった生徒の み、5、6年生で水泳の授業が実施される。

また、学校の図書室の規模がそこまで大きくないため、市の図書館に行き本を借りる 時間を作ることもある。学校の図書室で本を借りるときは、公共図書館のカードを使用 し、学校と公共図書館が連動している仕組みになっている。さらに、博物館や美術館も よく利用されている印象を受けた。郊外に出かけるときは、公共交通機関を利用するが、17歳まで無料で利用できるため、 移動に費用がかからない。このように公共施設を利用しやすく、税金が高くてもそれを 不満に思う人は少ないと言うのにも納得できる。

第7回目「日本のスクールライフと教育システム」
小中学校の日常生活や時間割、部活などについてパワーポイントで説明した。
質問やコメントをその都度小グループでディスカッションをした。
「スウェーデンと日本の違うところや似ているところ」を質問したりコメントをシェアしたりしながら授業を行った。彼らは学校で生徒自身が掃除をすることや一日の学校生活の時間が長いこと、放課後の部活などが違っていることに驚いていた。
スウェーデンでは自分の選択している授業の時間に登校し、授業が終われば帰宅する。自分のしたいアクティビティがあれば放課後に別の場所に出かけるようだ。
先生たちも自分の授業が終わればご帰宅する。特に金曜日は2時ごろから人が少なくなり3時ごろには空っぽになる。冬は3時すぎごろから暗くなるので帰宅は早いようだ。日本のようにどこかに飲みに行くような文化はなく、家に帰って食事をして家族で過ごすのが一般的。

第8回目「日本人の着物ライフについての説明と着付けのデモンストレーション」
始めに簡単な着物の歴史や日常生活や祝い事での着物、着物がSDGsであることなどについてパワーポイントで説明し、その後は、男性用の浴衣、女性用の紬に半幅帯、豪華な振袖と金糸銀糸の袋帯も見せ、実際に着てみたい生徒に着せた。6人の生徒がモデルになってくれたので、順番に着つけるのに30分近くかかった。先生にも一人振袖を着付けて差し上げた。

第9回目「書道作品作り1」
水半紙での練習は以前実施したが、実際に墨を使って書き、作品にするのは初めて。実施の前にあらかじめ、作品を「原爆の子の像」に持っていくので、平和に関する言葉、友情や幸せなど自分の思いを表すことばを決めてくるようにと伝えておいた。容易に探せるよう、小学校で使っている実際の教科書や漢字ドリルなどを見せてその中から選んでもよいようにしたり、実際に私が手本を書きそれを見て書くようにしたりした。

書写は手本をまねて書くのだということを指示したが、筆順については特に指示しなかったので思い思いに書いていた。名前も小筆、筆ペン、カラー筆ペンなどを自由に使って書いてもよいことにした。原爆の子の像に持っていく用、自分の家に持ち帰る用、学校に展示してもらう用の3枚を書くように指示した。

第10回目「書道作品づくり2」
先週書いた書道作品に折り紙で装飾した。折り紙を使って折った、折り紙作品を思い思いに飾っていた。これらの作品を学校に飾ってもらうととともに、原爆の子の像に千羽鶴とともに持参するつもりだ。
また、この日が最後なので3か月にわたった授業の感想や思いをレポートにした。作品を貼って記念撮影をして最後の授業を終了。

第11回目(特別支援スモールクラスでの授業)
特別支援教室のスモールクラスで書道の授業。
この日はサンタ・ルチアのセレモニーが教会であり,町内のすべての児童生徒が教会の聖歌隊の音楽を聴きに行った。サンタ・ルチアはキリスト教の女性殉教者で12月13日は彼女の聖名祝日。この地方では祝日ではなく、毎年このイベントに参加する。サンタ・ルチアは女性のサンタクロースのような存在だそう。イタリアのサンタ・ルチアがどうしてスウエーデンに根付いたかは誰も教えてくれませんでしたがこの地の人たちにとってはとても大切なイベントのようである。

そのセレモニーから帰って書道の授業。生徒たちは漢字やカタカナに興味を示し、名前をカタカナで表現したものを見ながらアルファベットとの違いを尋ねたり、何度もカタカナを書いたりしていた。
漢字は私が書いたモデルを見て、真似をして書くのだということを示すとしっかりとしたタッチで全員が書きあげた。心、和、友、美、平和、仁など・・・を選んで書いていた。(先生も書いてくださいました)
これらも一緒に原爆の子の像に持っていくことを説明し、折り鶴のいわれについてもハンドアウトを作って説明した。

10月の初めに地元の広報の方が私へのインタビューに来られた。なぜスウェーデンの中学校に来たのか、日本とスウェーデンの教育の相違、学校の印象、日本文化の授業について、スウェーデン文化の印象などを聞かれた。それが先日、記事として掲載された。
事前にインタビューに来られることは知らされてはいたが、何について聞かれるのかわからないので、勝手に想定して問答を作成しておいた。予想通りの質問だったが、話の内容から発展して意見を聞かれたり深堀されたりしたので、教育用語を覚えておいたり、印象や感想など瞬間的に英語で応答できるような英語力は必要だと痛感した。



今回は様々な取り組みの中で最も興味深かったチームプログラムについてご報告します。このプログラムは、1st grade の生徒たちが第2学期に取り組む教科横断型の課題です。毎週1つのテーマが提示され、生徒たちはチームごとに1週間で課題を仕上げていきます。

その中の1つとして、現在の学校のロビーをより快適な環境、空間にするための案を作成するという課題がありました。発表方法としては、ポッドキャストでコンセプトを発表、デジタルポスターで図案を提示しながらプレゼンし、最後に英語で簡単にポイントを説明するという流れでした。初回の授業では、実際にポッドキャストを聴きながら「伝え方」を学び、次に事前に用意された複数のコンセプトから現実的なものと興味深いものを3つずつ選び出すという作業に取り組んでいました。生徒たちが具体的に何をするべきなのか、導いていくための工程がしっかりと準備されていることがわかりました。使いたいソファや机、椅子等の家具についても生徒たちが選択し、その工程においては実際にフィンランドの家具会社の方が来校して、カタログを見せたり説明を加えたりしていました。発表はクラスごとに行い、最も素敵だと思った案に生徒が投票してクラスの代表案が選ばれていました。最終的に選ばれたグループの案に沿って実際にロビーが改修されるということで、生徒たちも楽しそうに取り組んでいました。

その他に、News report videoを作成するという課題もありました。ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』の話をベースに、グループごとに1つの出来事を取り上げ、その内容についてのNews report video を撮影、編集して完成させるという内容でした。また、半分のグループはfake newsとして動画を作成することになっていました。グループごとに様々な工夫が見られ、動画撮影のために衣装や小物を用意したり、登場人物や動物になりきってインタビュー場面を撮影したりしていました。インタビュー場面の撮影においては、一部英語で会話をするというルールとなっていました。

研修が始まって間もない頃、3年生の国語の授業を見学させてもらいました。その授業のトピックは討論のやり方ということで、生徒たちは先生が提示したテーマに基づいて自分自身の考えを書き、発表し意見を述べるということをとてもスムーズに進めていました。私は授業担当の先生に、なぜ生徒たちはこんなにもスムーズに自分の考えを発表することができるのかと質問してみました。その返答は、1年生の初期に取り組むチームプログラムを通して生徒たちは自分の意見を述べたり発表したりすることに慣れていくということでした。実際にチームプログラムを見学させてもらい、納得する部分がありました。チームで1つの課題に取り組むためには、自分の考えを伝えたりお互いの意見を交換したりすることが必要となります。また、様々な発表方法や表現方法を身につけることにも繋がります。どの授業においても生徒の主体的な活動がメインとなっていますが、今回のチームプログラムがベースとなっているということがわかりとても興味深かったです。


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