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2023年2月

成果
・カルチャーショックを受けることができた。
・人生で最も刺激的な日々。日本では味わえない体験ができた。
・英語を使うハードルが下がった。
 
本プログラムへの参加動機
 私は初任の小学校に6年勤め退職しました。ゲストハウスで働くなど旅人のような生活を2年間送り、その経験から海外文化、国際協力に興味を持ちました。JICA海外協力隊に応募したものの落選。合格するまで待つという選択肢もありましたが、早く海外に行きたいという気持ちが強く、知人の紹介で本プログラムを知り、自分の得意を生かして海外で働けることから応募に至りました。応募時点での英語力はかなり乏しく、筆記などの勉強はしていたものの会話はおぼつかないレベルでした。
 
受け入れ校の様子
 小1から中3までの年齢の子ども合わせて約400人のインターナショナルスクールでの研修でした。サポートスタッフを含めて先生は40人ほど。およその計算として、生徒約10人に対して先生が1人いるくらいの割合。日本と比べると人員面ではかなり手厚く感じました。
 
生徒の1日
毎日ランチタイムが違うことにまず驚きました。日本と違い、ランチは食堂でバイキング形式で食べます。生徒全員を一度に収容することができないので、食堂を利用できる時間が決まっています。また登校時間も日によって変わります。同じクラスでもAとBの2チームに分けて受ける授業もあります。1日のうち大きな休み時間が2回あり、その間は必ず外に出て遊ばなければいけませんでした。 
 
活動内容
授業見学が主な活動で、週に1度オプショナルな授業として日本文化クラブを受け持たせてもらいました。副校長からの提案では、固定の授業にサポートとして入ってもらえたらとのことでしたが、せっかくなのでいろいろな学年の違った授業を見てみたいと思い話すと、どの先生も快く授業を見せてくれました。日本との違いをたくさん知ることができました。詳しくは後述したいと思います。
また自分のクラブは週に1度でしたが、やはり準備にかなりの時間がかかるため初めての体験としてはちょうどよかったと思いました。クラブは1人で担当し、通訳などのサポートをする先生はいませんでした。楽しかった!と言わせたいと思い、意気込んで臨んだ1回目の授業は全く思うようにいきませんでした。練習した英語はほとんど出てこず、興味を持って質問してくれる子どもの言葉もうまく聞き取れず、打ちのめされたような授業でした。そこからできるだけ活動主体の授業にし、指示も2.3語でできるように覚えることで徐々に授業の流れを掴んでいきました。したことは簡単な日本語を使ったゲーム、折り紙、習字などです。
 
習字道具は日本から持って行きましたが、足りない分はアートの授業で使う筆を借り、下敷きは画用紙で代用するなどして行いました。授業後は毎回ヘトヘトでどっと疲れるのですが、子どもたちが日本語を覚えて廊下などで声をかけてきてくれるようになるのがとても嬉しかったです。

成果について
ここからは一番初めに書いた成果について詳しく話していきたいと思います。

カルチャーショックを受けることができた。
 2ヶ月という短い期間では何かスキルを伸ばすなど具体的な成長は難しかったですが、現地の生活や文化を知るには十分な期間でした。日本から遠く離れた地で生活する中で全く違った常識に触れ、これまでの自分の常識を疑うことができ、より広い視野を持って考えられるようになったと思います。その常識の違いについていくつか話そうと思います。
まず学校での授業について。フィンランドの授業は自分で課題を進めていくことが基本のスタイルです。授業の冒頭に今日の課題についての説明があり、あとは教科書やテキストを使って自分で進めていきます。教科書も自分一人で進められるような作りになっているので一斉に指導を聞く時間はほとんどありませんでした。プレゼンテーションを作るなどの調べ学習の時間も同じくらい多くありました。彼らはとても上手なプレゼンを作ることができ、人前で話すことにも幼い頃から慣れているようでした。作業は教室でしても廊下でしてもソファでしてもどこでも自由に選ぶことができました。
  
次に先生の働き方についてもかなり違いがありました。自主学習が中心の授業なので準備にかかる時間が少なく、さらにテキストなど印刷物の準備はサポートスタッフが全てしてくれます。特に驚いたのは、先生が私用でいつでも休めることです。フィンランドでは大学院を修了しないと先生になれません。そうした大学院生がstudent teacherとして代わりの先生を務めることがよくありました。彼らは前日にその日の授業の内容をメールで知らされ、1日の授業をこなしていました。日本の学校では前後の授業内容がわかっていないと授業を進めることがかなり難しく、先生は簡単に休むことができません。また授業数も少なく空きコマがあるため、その時間中に授業の準備や事務仕事を済ませ、ほとんどの先生が3〜4時には帰宅していました。
 
職員室はとても開放的で、よくお菓子パーティが開かれていました。日本の職員室の写真を見せると、「まるで工場のようだ!」と違いに驚かれました。これくらいリラックスして働ける環境は素晴らしいと思いました。

指導についても大きな違いがあり、日本のような厳しさはありませんでした。良い風に言うと、生徒の自主性を重んじた指導。悪く言うと、日本ほど学力保障はしてもらえない指導。そんな印象を受けました。日本ではみんな跳び箱を飛べるように!とか、漢字を覚えられるように!と全員ができるようにという指導が一般的ですが、フィンランドではそうした指導はありませんでした。学ぶ環境や内容は用意するから、あとは自分でしてね。というようなスタイル。やはり子どもなので勉強よりも遊びが優先して身が入っていない子もいましたが、授業を放棄したり途中で投げ出したりする子はいませんでした。中学生くらいの歳になるとほとんどの生徒が集中して授業に向かっていることに驚きました。日本では小学校までは頑張って勉強していても中学生になると反抗的になったり勉強から離れようとしたりする子がいますが、どちらかというと逆でフィンランドでは小学生の間は日本ほど集中して話を聞いていないことが多いですが、中学生にもなると落ち着いて学びに向かっていました。

授業内容、カリキュラムについて。日本との主な違いを挙げると、語学、宗教、性教育、お金の授業に大きく違いを感じました。メインとして行かせてもらった学校はインターナショナルスクールだったのでほとんどの生徒が低学年から英語とフィンランド語を話していました。日本と同じように単語の小テストがあったり文法について学んでいましたが、何より先生が日常的に英語を話して授業をすることが英語上達の秘訣のように感じました。地元のインターナショナルでない学校にも行かせてもらう機会があり、そこでは基本的にフィンランド語で授業が行われていましたが、それでも中学生くらいの歳になるとほとんどの生徒が英語でのコミュニケーションができるようになっていました。宗教、性教育や健康に関する授業、お金や経済について、調理、環境教育など、さまざまな面でより実践的な、これからの生活に役に立ちそうなことを学んでいる印象を受けました。驚いたのは、中学生で起業ゲームの授業がありチームごとに会社を作り利益を競い合うゲームをしていました。またある先生に聞くと、以前は教科書がこれまでの倍くらいの厚さがあったそうでカリキュラムの見直しがこの数年でどんどん進んできたと言っていました。日本では英語教育やお金の教育が重視されてきているもののその他のカリキュラムが削減されず授業時数も増えてきています。フィンランドでは日本に比べ授業時数が少ないのはもちろん、放課後に塾のような追加の学習を行うような子どもは少ないそうです。私の考えとしては、日本のカリキュラムでは子どもが覚えられるキャパシティを超えていると思うので不要なものは削減していくべきだと思いました。ただ、日本の学校の授業の質についてはフィンランドに劣っていないと思いました。子どもの能力を引き上げたり、子ども同士の考えを共有して思考を深めたりするという点では日本の授業の質は世界に誇れると思います。
 
次に生活の違いについて。フィンランドにいるとよくリラックスという言葉を聞きました。職場でも先生たちは休憩のたびにコーヒーを飲み、家でもソファに座ってくつろぐなどの時間を毎日大切にしているようでした。仕事が終わるのが早いので、早めのディナーを取ってからスイミングに行ったり、ジムやヨガ、クライミングなどもしました。

人生で最も刺激的な日々。日本では味わえない体験ができた。
日本語の一切通じない土地で生活することはただ普通に暮らすだけでも毎日とても刺激的でした。それに、ホストファミリーや現地でできた同僚の友人はたくさんの体験をさせてくれました。焚き火やハンティング、ハイキングに行ったり、ホストファミリーの別荘へ行ったり、本物のサンタにも会いました。真冬の川に入ったり、屋外サウナの後で雪の上で転がったりと、日本では考えられないような体験をすることができました。 
  
英語を使うハードルが下がった。
海外に行くことを意識し出してから日本で英語の勉強をし始め資格としてTOEICを受けたりもしましたが、実際に生活し始めると咄嗟に出てくる英語はほんのわずかな単語だけでした。はじめは、あれだけ勉強したのに・・・と自分の英会話力のなさに肩を落としていましたが、それでもせっかくの機会なのでできる限り積極的にコミュニケーションの機会を増やせるように努めました。拙い英語でもなんとか自分の気持ちは伝えることができ、使う機会を増やすと自ずと英語が覚えられるようになってきました。足りない英語を補うように勉強することでインプットとアウトプットを効率よく組み合わせることができ、日本にいる頃よりも圧倒的に勉強のモチベーションも上がりました。日本にいるとなかなか使う場面を想像して勉強することは難しいと思いますが、やはり英会話ができるようになるためには声に出して話すことが最も大切だと思いました。日々生活していると、たとえ文法がめちゃくちゃでも何か声に出さないと会話できないので強制的にアウトプットの機会が作れました。もちろん文法を覚えることはとても大切ですが、英会話の場面を意識した学習ができているかできていないかで、その勉強が英会話に活かせるものになるかどうかが大きく変わってくると思いました。とにかく瞬間的に声に出して言ってみる、言えなかった部分を補うように勉強する、という繰り返しで少しずつ英会話は上達していくと思いました。2ヶ月では英語が上達したと言えるほどの成果は得られませんでしたが、学習のコツは掴めた気がするのでこれからも学習を継続していきたいと思います。



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