トップ > 体験談

2024年2月

実際に現地校で研修すると、カナダと日本の教員の勤務体制を比べることができます。同じ"公立学校の小学校教員"という職業でも、日本とカナダでは異なる点があります。今回は、私が実際に研修を通して気付いた、カナダの労働環境の良い点を4つ紹介します。これらはどれもが、日本の教育業界における過酷な労働環境を変える手段になりうると私は感じます。

①補教体制
日本では、担任が体調を崩したときは、専科の授業等で手が空いている教員が代わる代わるクラスに入って授業をしたり、同じ学年の先生方で3クラス同時に授業をしたりすることもあります。校内にいる教員だけで学校をまわさなくてはならず、他の先生方の貴重な授業準備や事務作業の時間をつぶし、自分のクラスに入ってもらわなければなりません。担任が休むことによって他の教員への負担が大きくなり、迷惑をかけてしまうという思いから休みを取りづらいのが現状です。また、補教のときはプリント学習など教員による具体的な指示がなくてもできる学習が続き、あまり授業内容が進むことがありません。担任がインフルエンザ等で長く休むとその分授業も遅れ、取り戻すのにプランを練り直す必要があります。
一方、カナダの学校の補教体制は、外部にあります。担任が休む場合は、インターネット上の補教システムにアクセスし、臨時教員が実際に授業を行います。校内で教員をまわす必要がなく、授業プランを細かく伝えておけば授業も進めてくれます。子供たちからしたら"校内にいない見知らぬ大人"が急に授業をするのは違和感がありますが、他の教員に迷惑をかけず、かつ授業が進むのはありがたい体制だと感じます。担任の体調不良時だけではなく、外部の方との打ち合わせや校内に大きな飾り付けを作る時も補教体制をとります。午前中に補教体制を組み、校内の装飾を終えると自分のクラスに戻り、定時で帰る教員もいました。「日本なら、作品展前など、放課後18:00、19:00過ぎまで残業して校内の飾り付けをするのに...」とその様子を見て驚きました。

②一クラスに担任が二人いる
カナダでは、子育てをしている教員でも学年関わらず担任をもっています。日本では、小さいお子さんを抱えた教員は算数少人数などの専科をもつか、もしくは、低学年など5時間授業で終わる学年を担任することが多いです。しかし、カナダでは、子育て中の教員でも高学年担任をもつことができます。月〜水までが一人の先生。木〜金までが一人の先生など、同じクラスに二人の先生が曜日別で動きます。働く日数を絞り、担任をもつという制度です。授業の進捗状況等の連絡が教員同士で必須になりますが、働く日数を減らすことで子育てをしながら気持ちに余裕をもつことができるのは良い制度だと感じます。

③EAという仕組み
カナダでは、障害のある子供も通常学級で過ごします。支援のある子供一人に対しEAという立場の大人が一人つきます。支援が必要な子はクラスにたいてい一人はいるため、必然的にクラスには二人以上の大人が常にいることになります。たとえ癇癪を起し障害のある子が教室を飛び出してしまったとしても、追いかけてくれる大人がいます。担任一人ではどうしようもないときでも、大人の目が複数ある体制はとてもありがたいことです。また、休み時間はEAが校庭の子供達を見ます。休み時間中の子供たちは全員、校庭で過ごさなくてはいけないルールのため、教員はその間、校内で授業準備や会議、自身の休憩時間として一度子供と離れることができます。自分の時間と子供と触れる時間に区切りがきちんとある体制は、多忙な仕事をする上でも気持ちをリフレッシュする上でも大事なことだと私は感じます。


④出欠席管理
日本でもカナダでも、欠席連絡がなく朝の会が始まっても登校していない子供がたまにいます。学校によるかもしれませんが、私が日本で教員をしていた時には、朝の会をやりつつ、「少し待っててね」と子供に話し、ちょっとした時間で担任自らが職員室に戻り電話をかけていました。集団の子供を動かさなくてはならないのに、担任が少しでも教室を離れることはしたくないことです。しかし、カナダでは出欠席管理を事務室が主に行います。担任がデータベース上に出席連絡を登録すると、登校してない子供に事務の方が家庭に連絡をしてくれます。遅刻や早退もすべて事務室が管理します。こうしたちょっとしたことでも「全て担任が」とならない体制は羨ましいです。

以上、カナダの職場環境をみて、私が日本の職場環境に取り入れてほしいことでした。人件費や制度の問題で日本での実現は正直ほど遠いと思います。ただ、こういった手段は、労働環境を変える上で将来的に必要なことだと私は考えます。

▲ ページの先頭へ