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研修校は、4,000人規模の自然豊かなのんびりとした町にある唯一の高校で、全校生徒約80人の小さな学校です。学校の施設は北欧デザインのカーテンや黄色、赤などカラフルな壁、授業をする教室にはソファやクッションビーズ、可動式の机があり、生徒はかなりリラックスした姿勢で授業を受けていて、衝撃的でした。生徒の控室には、ソファやぬいぐるみ、音楽を聴くためのスピーカー、コーヒーメーカー、ホワイトボードなどがあり、ごろんと横になったり生徒同士が引っ付き合ったり、こちらもリラックスし放題のスペースになっています。
フィンランドの高校は基本的に単位制で、部活動にしっかり取り組みたい生徒など、4年間かけて卒業する生徒も一定数いますが、日本の高校とほぼ同じ学齢です。生徒たちは、素朴でシャイな印象ですが、打ち解けると流ちょうな英語と笑顔で話してくれ、日本の高校生と変わらないな、と感じます。一方で、自律性、自立性を尊重する国であるためか、服装やメイク、髪形などは驚くほど大人びています。多くの生徒がピアスや髪染めで自己表現を楽しんでおり、日本の制服文化や服装検査の話をすると驚きと関心をもって聞いていました。自動車で通学する生徒も多く、校外学習に生徒の車に分乗して行った時は不思議な気持ちになりました。また、フィンランドでは高校生でも低アルコールの飲酒が認められています。(「二日酔いで登校することはある?」との質問には、愚問とばかりに即「NO!」と返ってきました。)週末にバーで生徒に会って、「このお酒は飲むべき!」と薦められたのは衝撃的な体験でした。
ヨーロッパではタトゥーをしている人も多く、私自身の認識も大きく変わりました。フィンランドではタトゥーが許されるのは18歳以上からなので、高校でタトゥーを彫っている生徒はいませんが、祖母との思い出や好きな花など、卒業後に向けてすでにモチーフを決めている生徒もいます。「一生消せないからこそ、慎重に大切に決める」と話していたのが印象的です。

授業中は、トイレはもとより、教室内の移動、飲み物や携帯電話も基本的には自由です。当初は、急に立ち歩いたり電話が鳴って教室から出ていく生徒たちに「えぇ~!」と驚き、その度に先生を凝視してしまいましたが、授業中の規律は守られ、発言も活発です。自由なのに崩れないという状況を目の当たりにして、日本の高校の規律の厳しさについて考えさせられました。(ただ、ニュースなどでは、生徒が授業中に携帯電話やパソコンでゲームをしているという話も聞くので、学校や授業担当者によるものも大きいのかもしれません。)
多くの授業でペーパーレス化が進み、紙の教科書も希望すれば使えますが、ほとんど見かけません。筆記用具を持参しない生徒も多く、私がワークシートを使う授業をした際には、貸し出し用の鉛筆を取りに来る生徒の列ができました。日本でもかなり普及してきましたが、定期テストも支給されたPCで行っていたのは驚きました。(故障が多いので扱いを丁寧にしてください、という学校からのアナウンスが時々入ります。試験監督をしたときに、生徒のパソコンの電源が入らず往生しました。)また、私が受けている英語の授業では思った以上に宿題が多く出されます。授業担当者はPC上で課題の取り組み状況を見ることができ、進捗状況が成績に反映されます。生徒たちは放課後や空き時間を利用しているようで、取り組みの質、理解度共によいのも驚きました。フィンランドの大学入試にあたる高校卒業資格試験は、完全デジタル化され、1科目6時間という長丁場なので、生徒たちは進学を見据えて主体的に学習に取り組んでいるように見えます。基本的に先生、生徒双方に「学習はさせられるものではない」という共通理解があるからではないか
と感じます。

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