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2011年10月28日・Kazuaki Yazawa・ 20代 , フィンランド , 海外教育交換プログラム
フィンランドで研修を始めて半年経ったこともあり、研修校の先生方向けに、日本とフィンランドの中等教育の違いと題して、90分程度の講演を行った。渡航前は、授業の方法論のレベルで何か違いがあると期待していたが、中学高校段階の特に理数系の授業を見学する限り、特別なテクニックがあるわけではない。もちろん帰国後に導入したいと思う授業ネタはいくつも仕入れたし、こちらも優れた実験などを実演することで互いの授業技術を共有した。しかし、それらは表面的な違いに過ぎない。
理数系の授業については特に、15人程度の少人数にすることで、生徒と問答をするように授業を進めることができる。個々の理解度の差を把握し、問題演習では別々の内容を同時進行することが可能になる。実験についても、同時にたくさんのグループに対して器材や試薬を準備する必要がない。
国家による検定なしに作られた教科書が、もう一つの重要な制度的違いである。日本の場合、近年は「発展」と呼ばれる指導要領を超えた内容が一部で認められてはいるものの、依然として定量的な理解を深めるような内容は不十分である。その結果、特に中学段階では単なる暗記に走らざるを得ないような学習内容となってしまう。一方フィンランドでは、必要な専門用語を包み隠さず使って丁寧に解説した教科書を使っている。加えて、豊富な問題演習が含まれているので、教科書を読んで関連する問題も解くことで自学自習が可能である。
学校の役割についても、ずいぶんと違う。フィンランドでは、学校は勉強する場所である、という認識が生徒・教員・保護者に共有されているように思う。放課後の部活もなく、学年全体での宿泊行事もなく、入学式や始業式などの式典もない。派手さはないが、むしろ生徒は知的好奇心を満たすことで、学ぶことそのものを楽しんでいるように見える。教員もプロ意識の高い人が多く、生徒のために何が大切かを常に考えている。保護者も学校の方針に文句を言う人はほとんどいないし、学校に勉強以上の何かを求めないようだ。日本では、勉強するとともに、部活などで上下左右の人間関係を学び、宿泊行事や式典で連帯意識を醸成することも学校の役割である。
このほか、私立学校と公立学校の違い、習い事や塾の存在、教員の社会的立場など豊富な話題を提供し、活発に議論ができた。講演後は、家庭科室で日本の家庭料理を全員で作り、こちらも好評だった。

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