- フィンランド教育研修(インターンシップ) 体験談 -

外国語能力の高さに驚きました」 

●O.E.さん(女性)
●研修先:フィンランド・小学校
●所属・出身:学生(南山大学人文学部)
●時期:2006年9月(12ヶ月)
●No.060320019
2006/09  これからの一年間、本当に楽しみです。
 フィンランドに滞在して、一週間がたちました。まず、学校の先生方が、本当に親切にしてくださいます。学生用の寮に住んでいるのですが、日々必要な、食器類・シーツ、カーテン・更にはテレビまで貸して頂きました。学校は、朝の8時からお昼2時ごろまでで、お昼は生徒と一緒に給食のようなものを食べています。味が、日本の給食と似ていて食べやすくおいしいです。近くに大きなスーパーもあり、特に不自由はしていません。
 私の通っている学校は、一クラス20人前後で、一学年に二つずつクラスがあります。入学する際に、学力テストを受け、成績のよかった半分の生徒は英語での授業を受け、残りの半数はフィンランド語(母国語)で授業を受けています。そのため、3年生位になると、大変流暢に英語を話す生徒もいて、驚きました。子供たちは、日本の子供と似ている点が多くあり、恥ずかしがりやで、でも日本人である私にとても興味があるらしく、笑顔で挨拶をしてくれたり、話しかけたりしてくれます。ある授業で、日本語で名前を紹介したところ、授業後に、あなたの名前と私の名前を日本語で書いて〜とクラス中の生徒が行列を作ってくれました。また、日本人の絵をかいてプレゼントしてくれる子もいます。今は、様々な学年の様々な教科を見学したり、授業に参加したりしていますが、今後先生方と相談して、日本文化や日本語の紹介、あるいは数学・英語などのアシスタントティーチャーとしてすごすことになりそうです。また、近く(5kmほど離れていますが)に大きな大学もあるため、今度コンタクトをとって、そこの学生と交流したり、日本語を学びたい人がいれば何かクラスでも開けたらいいかなと思っています。
 街には日本人どころか、アジア人もほとんど見かけませんが、基本的にみな話しかけてみると大変親切で、嫌な思いをすることはまったくありません。それほど大きな街ではないのですが、生活に不自由することはまったくなく、とても住みよい街にこれたことをうれしく思っています。時間的に余裕があるので、今は、英語の勉強をしたり、フィンランド語の勉強をしたり、サイクリングをしたりしてすごしています。更に、図書館にいったりサウナやプールに入ったり色々なことができそうで、楽しみにしています。また、冬にはスケートやスキーの授業があるそうなので、子供たちと一緒に挑戦しようと思っています。
 学校には、先週までドイツ人の学生が2人来ていたり、今週からは旦那さんがこの街のプロアイスホッケーの選手の奥さんが(カナダ人)アシスタントティーチャーとして働いていたりと、様々な国の様々な人を受け入れているため、何か提案をすれば、快く受け入れてくださり、サポートをしてくれるので、これから様々な授業を提案して実行していきたいと思っています。これからの一年間、本当に楽しみです。
2006/10  湖と紅葉した森が大変美しい季節です
 一ヶ月前には、夜8時ころまで明るかったフィンランドですが、今では6時過ぎに薄暗くなるようになりました。湖と紅葉した森が大変美しい季節です。先月は、各クラスで日本と日本語の紹介をしてまわり、皆で日本語で自分たちの名前を書くことに挑戦しました。見たことのない文字で、自分の名前を書けたことに、どの子も本当に大喜びで、これであってる?ファミリーネームはどうやってかくの?私の名前を漢字でかいて!と次々と質問の声が上がり、大変充実した授業になりました。一年生の子どもも、挑戦して、ちゃんと自分の名前を書くことができました。
 今は、音楽の授業に参加して、日本の音楽(古いものから新しいものまで)を紹介しています。これも、大変興味深いようで、みな楽しそうに授業を受けてくれています。空いている時間には、英語や算数、ワークの授業のアシスタントティーチャーとして働いていますが、6年生にもなると、私よりも上手に英語を話す生徒が沢山いるため、逆に英語の勉強をさせてもらったり、リーディングの授業は、生徒として一緒に本読みをしたりしています。英語を上手に話す生徒が多いのですが、低学年子や、中には高学年でも英語をあまり話せないクラスもあるため、その子たちともっとコミュニケーションがとりたく、フィンランド語も勉強しています。
 今週から、近くの高校で、交換留学生のためのフィンランド語の授業に参加しはじめ、ドイツ・ブラジル・カナダ・オーストラリア・モルドバ出身の高校生と一緒に、フィンランド語の勉強をしています。海外の高校生は、本当に大人っぽく、自分の意見をしっかりもっているため、自分とほとんど変わらない年齢の友達ができたような感じで、とても楽しく勉強しています。また、小学校の先生で2名の英語のネイティブスピーカー、交換留学生の中にも3名のネイティブスピーカーがいるため、帰宅後も毎日英語の勉強をして、分からないところは、彼女たちに質問したりして、英語の勉強も楽しく続けています。日本語の授業というものは、今のところもっていないのですが、日本や日本語に興味のある生徒が、自ら日本語を教えてくれないかと声をかけてくれているため、今月または来月から、日本語のクラスをひとつ一から始めることになりそうです。まだまだ、習字や折り紙など、やることが沢山あるため、来月の活動もとても楽しみにしています。

2006/11  どの子も何かしら”自分の領域”を持っている
  フィンランドでは、例年よりも早い時期に多くの雪が積もり、現地の人もびっくりしています。お昼になっても、氷点下から気温がなかなか上がらないので、一度降ると、とけないで残っています。ただ、除雪の作業などが大変手際よく、歩道さえも、除雪車が通り雪かきをしてくれるため、生活にはそれほど支障がありません。また、よく聞く話ではありますが、室内の暖房設備が整っているため、日本よりも冬の生活は暖かく快適です。(1月ころには、−20℃になることもあるそうで、そうなるとさすがにわかりませんが)朝は、登校時間7:30過ぎに東の空が明るくなるようになり、目に見えて日の出と日の入りの方角が変化していく様子がみえて、大変面白いです。
  美術の時間に、習字に挑戦しました。ただ漢字を書くだけで、みな大変嬉しそうでした。自分の名前や、私の名前までも、書きたいとリクエストをくれたりして、とても楽しんでくれていました。ポケモンや、アニメ、漫画などだけでなく、古くからある日本の伝統文化にもぜひ興味をもってもらえたらと思っています。今週から、日本語クラブという名前で、日本語を教えたり日本の文化について調べたり学んだりするクラスを一時間、希望者のみで開くことになりました。午後の最後の枠の授業ですが、初回は8人もの生徒が参加してくれ、そのうち数名は、日本語がどうしても話せるようになりたいという意気込みをもって参加してくれているため、こちらも気が引き締まります。彼女たちの目の輝きを失わせないように、魅力ある楽しい授業を作りたいと思っています。個人的には、高校のフィンランド語のクラスに通い始めて約1ヶ月ほどたち、そちらでも新しい出会いや、英語ネイティブとの会話など、刺激のある充実した時間をすごしています。何も分からなかったフィンランド語も、最近少しずつ分かり始め、勉強するのが益々楽しくなってきています。先週の金曜日には、先生方と学校で日本食パーティーをしました。巻き寿司と、お好み焼きとカレーをみんなで学校の家庭科室で料理しました。みなさん、とてもおいしいと喜んでくださり、とても楽しい時間がすごせました。
  日本でいじめが問題になっているようですが、私はその要因のひとつにランキング”漬け”の日本の文化があるのではないかと思います。私が小・中学校のころを振り返ってみると、体育の得意な子が、生徒会やその他学校のさまざまな主要な役割を担い、そのほかの子供たちは学校では出る幕もなく、うずもれていることが多かったように思います。一方で、こちらの小学校では、体育ができるからといって、クラスを仕切るようなタイプの子供はひとりもおらず、一人ひとりが自分の得意なフィールドで活躍し、どの子も何かしら”自分の領域”を持っているような気がします。学力世界一で注目されがちなフィンランドの教育ですが、その他にもこれからの日本の教育界が学ぶべきことが多くあるように思います。

2006/12   pikku joulu クリスマス前に仲間同士のミニパーティ
 フィンランドでは、pikku jouluといって、クリスマス前に職場の仲間や友達同士と小さなクリスマスパーティーをする習慣があるのですが、私の学校でも、先生方とクリスマスパーティーが開かれました。毎年、男性と女性が交互にパーティーを主催するのですが、今年は男の先生方が、パーティーのプログラムをすべて計画して下さいました。パーティー前に教えてもらっていたことは、持ち物(毛糸の靴下、サングラス、Tシャツ)と、集合時間と集合場所(バス停)のみ。専用バスに乗り込むと、行き先が分からないようにと目隠しが配られ、森の中へバスはどんどん進んでいきました。なにもない森の中で、バスは停車。長靴が配られ、「さあ!歩くよ!」と、いわれるがままに、森の中を歩くこと10分。到着した場所は、戦争の頃に使われた地下室でした。アルミのコップでお茶をのみ、クラッカーとピクルスと、みかんが配られ、男性陣がクリスマスの劇を披露してくれました。パーティー・・・ご飯これだけかしら?と思っていたら、その後、近くのサマーコテージに移動し、本格的にパーティー開始。本格的といっても、フィンランドのご飯は日本とは違い、大抵サラダにジャガイモに、ちょっとしたお肉または魚が出る程度です。よく「フィンランドのご飯は好きですか?」「日本ではライ麦パンは食べますか?」と質問されます。フィンランドのごはんといっても、日本でも手に入るような食材しか使わないし、味も食べなれているもの(特に変わった香辛料を使ったりするわけではないので)が多いため、フィンランド料理だと意識をするようなものは少ないですし、日本では、パン屋さんに行けば世界中のパンが手に入るので、少し返事に困ってしまうことがあります。このような質問がされるたびに、現代の日本という国がどれだけ大きな経済大国であり、日本人が大変な飽食の時代を生きているんだということを考えさせられます。その後も、先生方が手作りで考えたクイズやミニコントのようなものなど手作り感いっぱいの素敵なクリスマスパーティーでした。フィンランド人はもの静かで、笑わないなんていわれたりもしますが、グローバル化の中で、彼らも徐々に変化をしているようで、私がこれまで出会った人々の中には、大変明るく、おしゃべりな方も多くいらっしゃいました。しかし、このような変化の中でも、フィンランド人は昔からの時間の過ごしかた、人生の過ごし方を謳歌しているような気がします。手作りのパーティー。自然と関わる時間の長さ。そして、何より大切にしている家族と一緒にすごす時間。経済的に発達して、生活水準も高く、教育の質も注目されているフィンランドの人々ですが、彼らはそんなことなどお構いなく、自分たちのペースで、自分たちの生活をただ愉しんでいるように感じます。

2007/01  サンタクロースは子供が起きているうちにプレゼントを届けに来てくれる
 一年でもっとも大切なイベントのひとつ、クリスマスが終わりました。この国のクリスマス、日本との大きな違いといえば、「サンタクロースは子供が起きているうちにプレゼントを届けに玄関から入ってきてくれる」ことです。私も、先生のご自宅のクリスマスパーティーに招かれ、サンタクロースに会うことができました。パーティーの後には、家族そろってお墓にキャンドルをささげに行きます。蝋燭の明かりで一杯のお墓は、日本の墓地と違い、不気味な感じがなく、ただただ美しかったです。また、この国に欠かせないのがサウナ!家族そろってクリスマスサウナに入るのが文化らしく、いつも電気サウナでも、この日ばかりは木で暖めたサウナを用意するおうちも多いようです。私も、クリスマスサウナを体験させてもらいました。想像とは違い、クリスマスに教会へ行く家族は少なく、12月の間に教会へいくことはあっても、クリスマスは家族と一緒にのんびりすごすことを、何よりも大切にしている方が多いようです。教会は、年に一度か二度しか行かないという人も沢山います。お正月文化のないこの国では、1月1日は、花火をあげてパーティーをしました。街を歩くと、クリスマスのイルミネーションがまだ残っていてなんだか日本とはちょっと違う年明けを楽しんでいます。

2007/02   クロスカントリーに挑戦しました
暖冬といわれていたここフィンランドでも、本格的な冬が到来し、先週は、−30℃近くまで下がり、日中でも−20℃近くから気温があがらない日が数日続きました。室内は暖房設備が整っているため、問題ないのですが、さすがにこの気温の中外を歩いていると、足がビリビリと痛み、まつげも凍りました。しかし、これだけ寒いと、雪がとけることがなく、街路樹はきれいに雪で装飾が施されたようになり、太陽の光に照らされてきらきらと光る粉雪は、この世のものとは思えないほどの美しさでした。今月は、友達に誘われて、クロスカントリーに挑戦しました。歩いて5分ほどのところに、コースがあるのですが、本当に森の中に入っていくコースで、静かな森の中で夕日にてれらされた道は、なんともいえない美しさでした。フィンランドはよく森と湖の国とうたわれますが、人々が、自然に帰る時間を大切に生きているのが印象的です。日本にも多くの森や、山など自然が残っているのに、なかなか足を運ぼうとしないですからね。

2007/03  JAPANESE DAYS ♪
先月は、二日間かけて、日本の文化にもっとふれようという学校全体の行事を開催しました。習字やおりがみ、お手玉やけん玉などの遊びから、紙芝居まで幅広くできるだけ体験型の授業にしたいということで、当日は地域の空手の先生方グループを数名招いての、空手の体験授業も行われました。紙芝居は、私が英語で作ったものを、友達がフィンランド語に訳してくれたものや、フィンランドの昔話を6年生の生徒が紙芝居に仕立てあげたものなどを、数名の6年生が低学年の生徒に読んで聞かせてくれました。また、当日は、同じ街の大学に交換留学生で勉強している5人の日本人にもお手伝いに来てもらい、私以外の日本人に出会って、子供たちも嬉しそうでした。私は、二日間ずっと一人で音楽の授業を担当し、「春が来た」と「ぐーちょきぱーのうた」と、「むすんでひらいて」を日本語で教えました。二日目の最後に、体育館に全校生徒が集まり、全員で「はるがきた」を合唱したときは、子供たちの能力の高さと、こころの美しさと音楽のすばらしさを感じることができました。個人的には、先週末に初のスノーボードから帰ってきて、数分後にぎっくり腰になり、今週はまだ一度も学校にいっていません。知らない間に、気候の違いや食生活の違いなどに、少々疲れがたまっていたのかもしれません。症状はだいぶよくなってきており、結果的には心から親切にしてくれるフィンランド人の優しさにまた感動するよいきっかけになりました。

2007/04  外国語能力の高さに驚きました
こちらの国に来て、驚いたことの一つに、人々の外国語能力の高さが挙げられます。多くの大人がコミュニケーションが取れる程度の英語力をもっており、若い人(大学生から高校生位)であれば、学校の授業に英語でもついていけるような能力を持っていることも全く珍しくありません。私の小学校では、半分のクラスが一年生から英語を学び始め、5・6年生では、第二外国語としてフランス語やドイツ語、ロシア語などを大半の生徒が学習し始め、高校生になると、自分の専攻した外国語の国に、交換留学生として短期の留学をする生徒も多くいます。この国の外国語習得能力の高さの理由の一つに、「人口が少ないために外国語を勉強せざるを得ない国の状況のため」と言った意見を耳にすることもありますが、この国の「充実した外国語教育システム」にその習得率の高さの秘密が隠れているのではないかと思うようになりました。
1、早期からの外国語教育の平等な機会(すべての公立学校で、3年生から英語教育が始まる)
2、少人数制の外国語教育(ただでさえ少ない約20人学級を英語のクラスはその半分で行う。つまり一クラス約10〜15人程度)
3、多くの交換留学制度(ヨーロッパの国々と多くの交換留学協定を結んでいるため、実際に学習した外国語を使い、勉強することに大変役立っている)
4、インターンシッププログラムの充実  (ヨーロッパの国々で、ホテルやレストランなどで現地の言葉を使って給料をもらいながら働く機会が多く提供されている。)
5、エラスムス計画 (大学生に限るが、EU内の多くの国々に短期間留学することが全く珍しいことではない。)
特に、3・4・5は、外国語習得に最も必要なモチベーションの維持に大変役立っていると思われ、英語教育の後進国日本が学ぶ点が、多くあるように思います。あと残り数ヶ月のフィンランド生活、この国の教育の秘密、この国の人々の秘密をもっともっと発見して、なにか少しでも日本の教育に還元できればと思っています。
2007/06   私の人生における価値観にも、変化が生じた
6月2日に6年生の卒業式をかねた、修了式のようなものが行われ、ここフィンランドのすべての学校は、長い夏休みに入りました。一年間(といっても、実質9カ月程度)、本当に色々なことがありましたが、大学を休学して、この国に来ることができて、本当によかったと心の底から感じています。素晴らしい人々との出会いと、豊かな自然との生活。この国に一年間住むことによって、私の人生における価値観にも、変化が生じたような気がしています。正直、このプログラムは費用の面等、疑問の残る点も多くありましたが、今の私にとっては、その費用では得ることのできないような、出会いと経験をさせてもらうことのできる、素晴らしい機会だったと、本当に感謝しています。私が、この一年経験したことが、日本でも何らかの形で誰かの役にたてることができればと、願っています。もう少し、この土地の夏時間を楽しんでから、日本に帰国したいと思います。