フィンランド教育研修 体験談

フィンランドの子供たちの「読解力」に感心」 

●Y.A.さん(女性)
●研修先:フィンランド・小学校
●所属・出身:社会人
●時期:2005年1月(12ヶ月)
●No.S60TK4008

2005/02 到着して2週間
フィンランド生活が始まって2週間が経過しました。今年のフィンランドは暖冬で、−10℃を越した日が1日しかありません。わたしが到着した時期は、フィンランドの美しい雪景色を堪能しました。各々の家の窓際に飾られたろうそくは本当に美しく、フィンランドの長く暗い夜をほのかに照らす幻想的なもので。着いた初日からホストファミリー宅のサウナも体験出来、その暖かさはこれから始まる1年間の緊張を一気に解きほぐしてくれるものでした。学校へは翌日から早速通うことになりました。毎日2kmの道のりをホストシスター達は歩くようです。最初はちょっと遠いかなとも思ったのですが、片道約30分のウォーキングは冷たい体を一気に暖かくしてくれるウォーミングアップのようなもの。毎日歩いて学校に行けるのが楽しくて仕方ありません。学校の先生方はインターン生に慣れているようでしたが、暖かいもてなしの言葉をかけてもらい、困った時はなんでも相談出来るような雰囲気で安心しました。翌週からは3年生〜6年生各学年週に1枠ずつ、日本語の時間を設けてもらえるよう話合い、わたしのインターン生活も順調なスタートをきれたようです。

2005/03  フィンランド語のスクールに通っています。
こんにちは。フィンランドに到着し、早くも1ヶ月半が過ぎようとしています。授業は英語で(時にフィン語も織り交ぜながら)進行しているので、スピーキングはまだまだ上達しませんが、出発前にフィンランド語教室に通っていたおかげか、話している内容が少しは理解出来るようになってきています。週に1回外国人を対象にしたフィン語のカルチャースクールにも通うことになり、それはまた勉強意欲が湧くもので楽しく学習しています。もちろん生徒たちからも学ぶことが多く、仲良くさせてもらっています。すでにHPでも紹介していて、わたしもこれにはかなり助かっているのですが。日本から持っていったPCを学校と家を往復させて使用するのは、故障の原因にもなるし、特にフィンランドのような気候の厳しい土地ではあまり外に持ち出したくありませんでした。マイクロソフトのHPから、日本語のIMEをダウンロードしてCD−ROMに焼き、それを学校のPCにインストールしました。そうすることで、現地のPCでも日本語でタイプ出来るので、メールやインターンネットで情報を得る場合のみであれば、学校に自分のPCを持ち込む必要はありません。詳しい活動状況、写真等は自作HPで紹介しています、、、。ので、もしよろしければこちらも見てください。http://saiko1030.nobody.jp/  旅の準備編として、フィンランドに持ち込んで良かった物をピックアップしてリストにしてますので参考になるものであれば、フィン研修の方にお伝え下さい。

2005/04  フィンランド人は自然に対してとても敏感です
こんにちは。いつもお世話になっております。フィンランドも長く厳しい冬が終わり、ようやく春の訪れを迎えました。日本のようなポカポカな陽気とは違いますが、澄み切った少し冷たい空気(今は日中で8℃ぐらいです)を全身で感じながら子供たちは嬉しそうに外で遊びます。雪溶けの春は、今まで見えなかった世界が顔を出し、違った形でフィンランドの大自然を楽しませてくれます。フィンランドにももちろん四季があるのですが、うっかりすると見逃してしまいそうなほどあっという間に過ぎていくそれぞれの季節(春、夏、秋)を楽しむ為に、フィンランド人は自然に対してとても敏感です。四季を感じる感性の豊かさは日本人と相通じる部分があるということを最近とてもよく感じます。研修が始まり2ヶ月半。最初のホスト宅では、ほとんどが英語での会話でしたが、2番目のホストに代わりなるべくフィンランド語での会話に努めています。学校でも先生たちはわたしとの会話を英語からフィン語に切り替えて下さり、かなりいい勉強をさせてもらっています。その為、フィンランド語をもっと学んで生徒や先生たちといいコミュニケーションを計らなければとの思いが沸いてきます。授業では引き続き「ひらがな」を特訓中です。「ひらがな」を学ぶのは生徒にとって初めてのことなので、わたしとしてもかなり新鮮な気持ちで教えられます。自分が作成した「ひらがな」ワークシートのおまけの塗り絵が楽しみできれいにファイルしてくれる生徒を見てとてもうれしく感じます。生徒にとって「ひらがな」とは、今はまだ文字ではなく「絵」の一部分と捉えているように感じますが、少しでも多くのことを伝えられるに頑張りたいと思っています。

2005/05   少し手のこんだ、ちょっと楽しい企画
こんにちは。いつもお世話になっております。先月はちょっと楽しい企画を、、と思い、少し手のこんだことに挑戦してみました。それは日本の伝統的な結婚式スタイル「打ち掛け&袴」をモノクロコピーした絵を生徒たちに配り、思い思いの色を塗らせるという授業。どんな色かは説明しませんし、事前に写真も見せないので、生徒たちは「打ち掛け&袴」がどんな色をしているのかは全く知りません。予想して色を塗るのです。(この教案はインターンシップの教案準備講座を受講した時に教えて頂いた案です。)最初は元になる絵を自分で描こうと思いましたが、わたしはHPを持っているということもあり、フィンランドに興味を持つ日本の方がこの授業に参加出来ればと思いHP上で「絵描き依頼」の呼びかけをしました。思った以上に「フィンランドの子供に、自分が描いた絵に色を塗って欲しい!」と参加して下さる方が多く、合計で4パターンもの絵を準備することが出来ました。感性豊かなフィンランドの生徒たちは、こちらが感激するほどカラフルで素敵な色合いで色塗りを楽しんでくれましたし、実際に「結婚式」のビデオを見た後も赤や黒の色にこだわることもなく、鮮やかな作品が出来上がりました。この授業をするにあたって生徒たちにも喜んでもらえたのはもちろんですが、日本からこの授業をお手伝いして頂いた人たちにも生徒の作品を画像で送るととても喜んでもらえ、時間はかかりましたがやって良かったと心から思います。そしてこういう形でわたしの活動を応援して下さる方々に心から感謝したいと思います。

2005/06   6年生たちから寄せ書きをもらいました
いよいよフィンランドも夏休み。フィンランドには四季がないようで、各季節の境目が日本のようにはっきりしていてとても美しいです。冬には枯れ枝であった白樺の木には緑の葉がつき、そよ風に揺られると新緑の匂いが一気に立ち込めます。日差しは強いですが、それででも涼しく感じられる夏は、フィンランド人にとっても快適な気候なのでしょうか。まだまだ水温は低いですが、子供たちは湖で泳ぎ始めました!フィンランドの国旗を象徴するような青い空と真っ白な雲の下、今まで足りなかった光を浴びるため屋外で出来る思い思いの活動をしています。夏休みに入る1日前は、6年生の卒業式そして1年の終わりを迎える終業式でした。去りゆく6年生の為に、5年生女子と「卒業おめでとう」の文字を習字で作成。6年生の最後の日本語の授業にその文字をプレゼントして記念撮影を行いました。(卒業式の会場にも飾ってもらいました!)そして「中学校へ行っても元気で楽しくね!」とのメッセージをカードにし生徒ひとりひとりに手渡しました。手渡す際にバックで流していた平井堅の「キミはともだち」の曲、そして生徒たちからもらう「キートス=ありがとう」の言葉に思わず涙しそうになりました。卒業式が終わると、なんとその6年生たちから寄せ書きをもらいました。中には覚えたてのひらがなで「ありがとう」の文字が。ものすごく感激しました。活動も前半が終了しましたが、夏休みにはリフレッシュを少しした後で、後半の授業準備、フィン語学習に力を入れていきたいなと思います。
 
2005/07   ヘルシンキ大学夏期講習に参加
いつもお世話になっております。6/20〜7/7までヘルシンキにあるヘルシンキ大学夏期講習に参加し、フィンランド語をみっちりと学習してきました。3週間という短い期間でしたが、1番目のホストファミリーの友達宅に居候させてもらいながらの通学でした。毎日宿題が山のように出ていたので、学校が終わってからヘルシンキ内を観てまわることも思うように出来ませんでしたが、同じ意欲を持ちながらフィン語の勉強に励む外国人の方々と知り合いになれたこと、自分の中で混乱していたフィン語の文法に関してもだいぶクリアになりいい経験になりました。同時に今までずっと憧れだったノルウェーのフィヨルドまで足を運ぶ事が出来てその3週間は本当に有意義なものになりました。8/14まである夏休みですが、ラハティに戻った後はフィンランドの夏の醍醐味「サマーコテージ」でホストと過ごしたり、ベリー摘みをしたりとまだまだ楽しみたいと思います。もちろん、後半の授業の準備にも取りかかる予定です。

2005/09    フィンランドの子供たちの「読解力」に感心 
毎週月曜日はクラブ活動の日。数種類あるクラブ活動の1枠を「日本クラブ」と題して担当させてもらっています。3ターム目の今回は4年生〜6年生を対象にした活動。今回のテーマは「紙芝居づくり」です。日本の昔話をみんなで読み、段落ごとに区切ったストーリーから連想する絵を描き、最後に紙芝居形式でみんなの前で発表するというものです。フィンランド語で書かれた日本の童話を図書館へ探しに行ったところ、「鶴の恩返し」があったのでそれを今回の授業で使用することにしました。生徒に物語をまず読んでもらい、わたしが用意した設問に答えてもらいました。1.鶴の正体はなんでしたか?2.なぜ鶴は空に飛んで行ったまま、二度とおじいさんとおばあさんのところに帰ってこなかったのでしょう?3.この話についての感想、この3つの設問です。2番目の設問について数名の生徒がした回答に驚きました。「なぜならばおじいさんとおばあさんは女の子との約束を破ったから」と回答していたのです。「鶴の恩返し」を通してわたしが感じてもらいたかったこと、「苦しんでいる鶴を助けるおじいさんの優しさ、そして約束を破らないこと。」その意図とする通り読解してくれたのです。日本昔話には「教訓」が詰まっていますが、それを読み取れるフィンランドの子供たちの「読解力」に感心しました。

2005/10    「巻き寿司」の調理実習
10月の初めに「巻き寿司」の調理実習を行いました。フィンランドでもやはり日本食レストランが人気で、そのなかでも「巻き寿司」は見た目にも華やか且つ斬新な口あたりでちょっと「洒落た食べ物」的な位置づけである気がします。 対象学年は5年生と6年生。全員に寿司作りを体験してもらいたかったので、5人5グループを結成。1グループにつき2巻を担当してもらいました。 調理実習をする場所がわたしの小学校にはないのであらかじめ酢飯をこしらえ、具もカットした状態で生徒たちに渡し、のりに酢飯を広げ、巻く、切る作業を実際にやってもらいました。 1番気を遣ったのは「食あたり」。生徒たちには酢飯を手で掴むのだから、何度も手を洗うように、酢飯がついた手をなめたりしないようにと注意し、どこで調理実習をするにも基本となることを口を酸っぱくしながら言いました。もうひとつは、フィンランドで全て手に入るものを使って実習出来ること。せっかくの実習なので、もう1度生徒たちが家族と一緒に挑戦してもらえれば「寿司」の存在が近くなる気がしたのです。幸いなことに、具として使った「きゅうり、卵、スモークサーモン、エビ、海苔、お米」も「巻き簾」も大きなスーパーで手に入ったので、生徒にそれを強調することも出来ました。 味に関しては、好き嫌い半々で「海苔の歯ざわりの奇妙さ」と「酢飯の甘さ」に躊躇する生徒もいましたが、期待以上に几帳面に見栄えも美しくつくってくれました。フィンランド人の物づくりに対するこだわりと繊細さを垣間見ることも出来、五感をフル活用した楽しい「巻き寿司」の授業が実現しました。 この授業をするにあたって、準備段階で様々な人のアドバイスと助けを頂けたことも本当に嬉しかったです。感謝の気持ちでいっぱいです。  

2005/11   「漫画のコマを考えてみよう!」
今月行った楽しい教案と言えば「漫画のコマを考えてみよう!」です。現在フィンランドでは、日本のアニメ、漫画が大流行。ドラゴンボール、名探偵コナン、ONEPIECE等日本のコミックそのままの形でフィンランド語に訳され書店で販売されています。フィンランド語訳の本は人口に比例し値段も相当高いのですが、コミックに関しては比較的安い5ユーロ程度で購入出来ます。特にドラゴンボールは小学校の生徒たち(特に男の子)に大人気なので、漫画を使った教案がつくれないかを考えました。ドラゴンボールの1シーン、「7つのドラゴンボールが揃い、ウーロンが現れたシェンロンへ願いを叫ぶシーン」のコマに自分だったらどんな願いをシェンロンにするのか?実際にコマに願いを入れてもらいました。生徒達はドラゴンボールの漫画に興奮し、思い思いの願いを入れてくれました。「今年の冬はたくさんの雪が降りますように(願わなくとも十分に降るんですよ:笑)!」というのがわたしの中で1番印象に残った願いでした。

2006/01  1番大事なのは相手を理解しようとする気持ち、そして笑顔だね!
1年間のフィンランド研修が終了しました。最後の1ヶ月は心残りをなくすために、授業にもフィンランドでやりたい事にも力を入れて頑張っていました。年末には念願だったオーロラをラップランドへ観に行くことが出来ました。観られる可能性は100%ではありませんでしたが、計4時間外でねばって観られた時の感動は忘れません、研修最後の最大のご褒美です。学校では最後にわたしから生徒へ小さな贈り物をしました。「愛、彩、友、誠、侍」の5種類の漢字と自分の似顔絵をあしらったしおりをひとりひとりに名前入りで配りました。作成に苦労はしましたが、なんてことのないしおりに生徒達が喜ぶ姿を見て本当に嬉しかったです。わたしが最後に生徒たちに言った言葉、「外国では言葉は大事。でも1番大事なのは相手を理解しようとする気持ち、そして笑顔だね!それがあればどこへ行ってもきっとうまくいくよ!」と。現にわたしがそうでしたから。生徒たちからもらった手づくりのカード、文集はフィンランドでの楽しかった1年、頑張った1年を思い出させてくれますが、それはこれからもこの先も頑張って!という生徒たちからのエールでもあります。わたしはそれに応えるべくこの先もフィンランドで得たものを生かすべく頑張っていこうと思います。