最初の1ヵ月は、毎日泣いて暮らしました
上原陽子さん
スペイン
日本の東北地方と緯度が同じ、ガリシア地方オレンセ県。私が派遣されたコンソ村は村民約20人、もちろん日本人はゼロ。近隣の村も含めた全校生徒40人の学校や村ではスペイン語が通じますが、おじいさんおばあさんが話すのは「ガジェゴ語」。短大は国文科で、中学高校の英語が嫌いだったので、スペイン語ならと会社の帰りに始めたのですが、ガリシアに着いてホストの家族とご飯を食べているとき、会話が全くわからない。初めの1ヵ月は毎日泣いて暮らしました。そのうち「泣く暇があったら1日一つでも単語を覚えよう」と本やラジオで勉強を始めると、子どもたちが何を言っているのかわかってきて、授業を説明できるようになってきたんです。(もっとも子どもたちには、私が何を言っているのかわからないと言われましたが)。とにかく自分の知っているあらゆる単語を駆使して伝えるのに必死。学校で、ガジェゴ語を学んでいる珍しい日本人ということで、テレビの取材も受けました。12月に帰国する際には、空港で地元のおじさんたちの下ネタ冗談を軽くこなして言い返せるようになっていました。校長先生の夫が元医者で、週末ごとに一人暮らしのお年寄りを訪ねるのに付いていったとき、会話はガジェゴ語だけでわかりにくいけれど、折り紙を作ってあげたらとても喜ばれたんです。言葉をなんとかしようと必死になってはいたけれど、コミュニケーションは言葉だけじゃないんだとも思いました。