人生の1ページ“リフレッシュ休暇”
前田 由美さん
ドイツ
「WILLKOMMEN YUMI!」の旗と共に私のドイツ生活の第一歩を温かく迎えて下さったのは、ホームステイ先のファミリーたちでした。私が滞在した家は、その昔、農家だった建物を自分たちで改装し、いかにもドイツらしい大きなレンガの三角屋根の建物と納屋だった建物の2つが広い敷地の中に立っていて、6家族が隣り合わせで住んでいました。その為、隣のファミリーたちも私を歓迎して下さり、念願の海外生活が驚きと喜びと期待の中、始まりました。ドイツ語は殆ど話せず、不安はありましたが、ドイツに着いた瞬間から不思議と自分から話しかけようとしていたのを覚えています。やはりその場に立ってみると、意外と覚悟ができるのかもしれません。とは言ってもホストファミリーが話す言葉を殆ど聞きとれずいつも???の表情でしたが、私にとって言葉の壁よりも、そこで生活できる喜びと楽しみを強くしたものは、ステイ先の環境でした。家の周りは広い芝生が広がり、玄関を開けると、目の前の庭には、マーガレットの花が咲き乱れ、夕食はいつもその庭でしていました。とても贅沢な恵まれた環境で、気持ちまで開放されました。
さて、研修先の学校は、家から歩いて5分。隣の子どもたちが毎日、迎えに来てくれ、一緒に通いました。学校では、ホストティーチャーの4年生のクラスに入りました。授業内容は殆ど聞き取れないのですが、休み時間には、卓球や缶けりなど子どもたちと一緒に遊び、私が紹介したゲームも楽しんでくれました。クラスでは殆ど言葉が出なかったのですが、子どもたちとの遊びを通して少しずつ会話できるようになり、いろいろな普段の生活の中での言葉も教わりました。時にはScheiァe!(くそ!の意)と子どもの真似をして言うと、子どもは大笑い!(後からホストファミリーのお父さんに学校でそんなことばは使わないほうがいいよと言われました・・)本当に多くのことを子どもから学ぶことができました。日本文化の紹介という役割で、始め、私のクラスの4年生の子どもたちに折り紙、書道などを伝え、ゲームや日本のおもちゃなども楽しみました。
そして長い夏休みの後、今度は1年生のクラスに入り、少人数ごとに毎日折り紙を伝えました。どの子も興味を持って、楽しんで取り組み、順番の来る日を待っている程でした。この学校には独特のシステムがあり、1クラスに担任の他5,6人のスタッフがいて、私もそのひとりとしていろいろお手伝いさせて頂きました。しかし時が経つにつれ、私のクラスの子どもたちだけでなく、他のクラスにも日本文化を伝えたいという思いも強くなり、実際、他のクラスの子どもたちが「私のところにも来て!」とよく声をかけてくれたこともありましたが、なかなかチャンスがなく、ある時、ホストティーチャーに、「全クラスを回りたい」と希望を話しました。すると、それを快く受け入れてくださり、全クラスの先生宛に手紙を書きました。結局、そのことをきっかけに、毎日、様々なクラスを回り、折り紙、書道、日本の歌、文字、遊びなどを伝えることができました。子どもたちは私がクラスへ行くと喜んでくれ、内容にもとても興味を示し、よく集中して参加していました。特に、文字には関心があるようで、それぞれの名前をカタカナで書くと、すぐに覚えてしまう子もいました。
最後の3ヶ月間は、とても忙しく毎日、時間ごとにクラスを走り回っていましたが、とても充実していたのを覚えています。最終日に学校全体でお別れ会を開いてくださり、コソボから来た特別クラスの子どもが「カエルのうた♪」を人形を使って上手に歌ってくれ、とても感激しました。「Yumiがいなくなると寂しい!」と言ってくれた子どもの言葉を聞いて、私がこの学校に9ヶ月間滞在し、日本について紹介したこと、共に触れあったこと、言葉を交わしあったこと、共に生活したことがお互い良い刺激であり、意味のある体験であったと実感させられました。子どもたちの心の中、そして私の中にもひとつの良い思い出を作ることができ、それが、何よりも大切なことだったと思っています。この学校で研修できたこともとても貴重な体験でした。様々な国の子どもたちが集まり、その中にコソボから助けられた子どもたちもいました。ヨーロッパの情勢を目の当たりにし、いろいろな問題を考えさせられました。教育システムも独自のものでびっくりすることばかりでした。本当に多くのことを学ばせて頂き、私の視野がどんどん広がる9ヶ月でした。学校とのつながりは今もあり、3年経ちますが、毎年、小さな文集が届きます。
ホストファミリーはいつも私の片言のドイツ語を注意深く聞いて、ゆっくり丁寧に話してくれました。しかし、いつになってもファミリーたちの会話を聞き取ることができず、寂しい思いもありました。でも私にとってラッキーだったのは、ひと家族だけでなく、周りの家族とも知り合えたことでした。クリスマスやカウントダウンも多勢で楽しむことができました。「日本人は働きすぎだ」と言われたこともあり、季節ごとにしっかり休みが取れるドイツ人の生活に対する考え方を知りました。家族を大切にし、休日や、自分の時間を大切にする、又個人を大切にする価値観も学びました。私が10ヶ月間、ドイツで滞在している間、ある意味、日本での生活よりもリラックスして過ごせたのは、そんな個人の自由をより広く受け止める人々の中にいたからだろうと感じています。
私がこのインターンシップの体験を通して得たものは、多々ありますが、特に“やればできる”という自信を持てたことでしょうか。勿論、良いことばかりではありませんでしたが、家族、仕事、人生にとってなにが大切か・・・私の価値観を揺さぶるような刺激を受けたことは事実です。皆それぞれの体験から得るものは違うと思いますが、思いきってチャレンジすることで何かが新たに生まれるものだと思います。私の場合、不安よりもそこに何があるのだろう?何かを見つけたい!という漠然とした、ある意味、楽観的な希望を持って旅立ちました。だから、このような体験ができましたし、全てが、私の人生の1ページ“美しい思い出”として残りました。あれから3年経ちますが、ドイツで知り合った人々との心のつながりはいつまでも持ち続けていきたいと思っています。
このような機会を与えて下さったインターンシップの活動、スタッフの皆様に心より感謝したいと思います。有難うございました。Vielen Dank.