ドイツに滞在して
飴野 順子さん
ドイツ
社会人になり4年が経とうとしていた頃、新聞の片隅に「一年間英語だけで暮らしてみませんか」というフレーズに魅かれました。プログラムに参加したいと思った第一歩です。
 英語で受験したものの、当時ドイツ語を習っていた私は参加国を決める段階で随分悩みました。ホームステイの経験や旅行を通じてヨーロッパへと考えていたのですが、英語圏よりドイツ語圏への興味が強くなっていたのです。ネイティブによるインタビューを受け、最終的にドイツ語圏のインターナショナルスクールを希望しました。
 私が参加することとなった学校は、ドイツはミュンヘン空港から近い田舎町にありました。3歳から18歳までの生徒約300名が在籍し、その内1割が日本人生徒です。私は3〜11歳の生徒を担当することになり、なんと日本人生徒に国語の授業をするよう依頼されたのです。そこで、外国人の子供たちには休み時間を費やして日本を紹介する事となりました。準備した教材では不十分だと感じ始めていた頃、日本から嬉しい小包が届きました。知り合いからの問題集の数々でした。私の思いがけない状態を手紙で知り、ご主人と思案の結果役立つものをとの配慮でした。その問題集を手にしたときの心強さは今でも忘れられません。
 活動の場は学校だけではありませんでした。ホストファミリーはもちろんのこと、その友達家族やご近所にまで輪は広がり、日本人である私を快く興味を持って受け入れてもらえました。何かのパーティーの際には巻き寿司や押し寿司、肉じゃが、和菓子と現地で作りやすい日本食を用意しました。時には簡単なレシピを要求されたこともありました。抹茶の色に驚いた子供たちの顔、折り紙で動物や小箱を作るたびに湧き起る歓声も印象深く残っています。
 帰国してから5年が経ちましたが、その間にホストファミリーを再訪するなどして現在でも連絡を取り合っています。この活動を通じて、私自身が経験し吸収できた事柄はもちろんのこと、私という一日本人を通じて彼らの中に日本を意識する心を植え付けられたこともまた、大きな成果だと思っています。そして何よりも、日本文化の素晴らしさを再認識できたことは私にとってこの上ない喜びです。この先もホストファミリーとはお互いの成長を見守り、お互いの国を理解する気持ちを持ち続けられたらと願っています。