日本の文化を紹介しながら生のフランス語を学びませんか
川崎 忠子さん
フランス
三人の子も家を離れ、早々に退職した旦那さんがゴロゴロしている家庭を暫く空けることができる!外国でフランス語を学びながら生活できる!新聞の小さな広告は私に夢を与えてくれました。若かりし頃の夢は、世界を旅して日本とは異なる自然・文化に接する事でしたから。
結婚後、科学論文抄訳のアルバイトをするつもりで独学で学び始めたフランス語、三日坊主にはなりたくありませんでしたし、愛する子たちに、学び続ける母親の後姿を見せようと細々と続いたおかげです。「継続は力なり」。神から与えられたチャンスだと信じています。
準備段階は又、いろいろ学ぶ楽しさを経験しました。日本史も再び読みました‘井の中の蛙’の夢は広がり、「何事も積極的に」「年だから・・は禁句!」にしました。今もそうですが、日本文化・日本の特異性を総体的にとらえ、子供に伝えるのは難儀ですし、かなりの語学力が必要です。自分には何ができるか・・・?
私は紙しばいでの教育も良いと考え準備しました。既製作品を仏訳して用いました。宮沢賢治の「白像とオツペル」等は私も気に入り、今でも幼い子の真剣な眼差しを忘れません。折り色紙で共同作品も作り、子供の日、クリスマスにはもりあがりました。
IIPの先輩の勧めで約1メートルの十三絃琴を作らせ持参したおかげで、音楽の時間を受け持ち琴の伴奏で「メダカの学校」等日本の歌を教えました。そのうち、ノルマンディーの都市カーンで世界ミュージシャンの中に入って演奏しました。フランスの都市には世界中から芸術家が集まっていますので時に無料の演奏会が催されるのでしょう。とても自然で開放的な良い雰囲気でした。物珍しさもあったのでしょう。テレビにも出たそうです。
習字もお茶も頼まれれば大した事はできませんが精一杯教えました。
家事の煩雑さを忘れ、心配悩み事から離れ、自分自身の時を持てた事、勿論IIPの一員として周りの人々に支えられ、元気な子供たちの笑顔に囲まれての充実した日々でした。友もできました。日本人以上に濃やかな人々でした。より良く生きる事が自然に備わっているように思えました。厳しい歴史を乗り越え、生き方も洗練されたのだと思います。事実、孤独も体験しました。が、一人ぽっちの年とった日本女性に親切でスマートに接してくれました。
今ではフランスは私には最も親しみのある興味ある“友国”です。新聞を開いても、フランスに関する記事が先ず目に入ります。滞在中に感じた事ですが、シラク大統領は国民に密着した政治手腕のある人物で政治が機能している、と少々羨ましく思ったくらいです。
学べる時には貪欲に学び、他の国の空気を吸ってその国の人々と会い、いろいろな体験を経て自分の世界を広げ、心に折りこんでゆくことができました。失敗もしました。・・すべきであった、と悔やんだこともありました。すべて貴重な体験です。
少々残念に思ったことは、当地の本屋で本を購入しながら、読まなかったことです。本気で読んでいれば、より深くより楽しく理解できたのでは・・、と思うのです。囲りはすべてフランス語の先生なのですから。本棚には友から贈られたフランス語の本もギッシリ詰まっています。哲学的なものから小説カラフルな楽しいものまで・・。
長生きをして、ルーペ片手に読んでは忘れ、忘れながらも読み進んでゆきましょう。間もなくノルマンディーの最も美しく輝く季節到来・・高らかな小鳥の歌声、芳わしい風、わたしの最も素晴らしい体験!!!